手技テキスト/森田式乳房マッサージの基本(抜粋)

はじめに
この手技は、今は亡き恩師、森田正先生の著書[森田式乳房マッサージ]より、
過去に私自らが手技の習得のためにその一部を抜粋して、書き写しておいたものです。
したがって、これは、あくまでも私自身のテキスト文書でありますので、
より正確な内容を希望される方はじかに、先生の著書をご覧くださるようお願いします。
また、この施術そのものについても、当院の施術メニューには無いことをあらかじめ申し添えておきます。


[1] 適応症
うつ乳、乳汁分泌促進、乳腺炎・乳癌の予防等

[2] 施術前の注意
施術者は、日頃から手を清潔に、柔らかくし、指をなめらかにして、爪は短く切りそろえておく。
また、詰めの切り口には、ヤスリをかけておく必要がある。
服装は、白衣を着用し、そでを、肘関節までまくり上げておく。
施術にあたっては、充分手指を消毒し、程よくあたためておく。
産婦は、防水シートと、バスタオルを重ねてしいた上に上半身はだかにさせて仰臥させる。
また、普通のタオルを2枚以上用意しておくのが理想である。
これは、片側の乳房をおおうためと、施術中の乳房からの、乳汁をふき取り
あるいは、その飛散を防ぐためである。
施術者は、産婦の横に位置し、ベッドの場合は立位あるいは椅子を使用する。
タタミ、床の場合は、立膝または正座にて行う。

[3] 基本手技
(1) 乳管の開通方
〔a〕 まず、乳根部を左手でささえるようにつかみ、右手の拇・示・中の三指腹で乳頭を縦につかむ。
そして、乳頭より乳輪まで、この柔捏をくり返す。

〔b〕 次に、両手共に〔a〕のようにかまえ、乳頭を、よじるようにもむ。
ときにより、こよりをよるように、もむこともある。

〔c〕 左手は〔a〕のかまえで、右手は示・中指でタバコを吸うときのように乳頭をはさみ、
拇指腹で乳管の開口部を、圧しつつもむ。

〔d〕 左手は、〔a〕のかまえのまま、右手の示・中・薬の三指腹で軽く乳頭を圧乳した位置で、
さらにその乳頭を上下、左右、あるいはななめ、輪状にと動かす。
〔e〕 左手は、〔a〕のかまえのまま、右手の中指、または薬指、ときとしては拇指腹にて
乳輪より、乳頭先端部に向かって軽擦する。
以上五つの手技の内、〔a〕から〔d〕までは、乳管内の脂肪塊を、剥離させるための手技であり、
〔e〕は、剥離させた脂肪塊や、粘り気の初乳を乳管口に向かって、送り出す手技である。
また、これらの手技は無痛に行うを原則とし、
特に吸い傷のある場合は、〔c〕〔d〕をはぶき、細菌の感染に、充分注意しなければならない。
なお、乳汁のうっ滞がひどい場合には、〔a〕の手技を行った後
(2)の、二段式搾乳法により乳管の開通している部位の乳汁をまず排除して
その後に、〔b〕から〔e〕までの手技をを行う。
また、乳房が緊満状態のまま開通不全の乳管に充分な作用を施そうとしても
無駄な力を要し、激痛を発するだけであまり効果はない。
そこで、搾乳可能な部位からうつ乳を除き、なるべく乳房を弛緩させておき乳管開通をはかる。
乳管が充分開通しているものも、搾乳前には〔a〕の手技を行い、搾乳を容易にしておく。

(2) 二段式搾乳法
まず、左手は、乳管開通方の〔a〕と同様に、
拇指と四指とで乳根部のしこりの部分を柔らかく支えるようにつかみながら反復しつつ位置を変えてゆく
これは、うつ乳を少しづつ乳頭方向へ送り出す、いわゆる、押し出しポンプの役目をするものである。
この力度は、うつ乳を押し出すというより、
右手の動きによって加わる圧力の防波堤にするくらいの感じでよい。
これに対して、右手は、拇指・示指の二指腹、あるいわ
拇指・示指・中指の三指腹で乳頭部をたてに深くつかみ
胸壁に向けての加圧とつまみ運動を、リズミカルにくり返し行う。
このときのつまみかたは、乳管頭の付近、あるいわ
乳頭を、浅く、深く、そのときに応じて変え四方八方からつまむように、手の向きを変えていく。
ただし、この際、左手で圧する乳体部と右手で抑える乳管とは一致しなければならない。
左手が送り出した乳汁で、充満しているところを右手で圧することにより、その流出をはかり、
さらに、乳管をつまむことによって噴出をはかる。

ーーリズムと力度ーー
これは、非常にむずかしいが、リズムは左手1に対して右手2の割合の運動とする。
力度は左手は、乳体部の乳汁を乳頭に向けて送り出すと共に
右手によって乳管に加わる圧力の、防波堤となるよう右手より、やや強めにする。
右手を100とすると、左は120くらいがよい。
右手100の内、70は胸壁に向かって加圧し、のこり30で乳管をつかむ。
この30は円形の乳管が、楕円形になるくらいの力度である。

〈初心者向け〉
まず、左手で乳体部を圧しておき、右手で乳管頭周囲から、圧迫しつつ手元に引いて排乳する。
排乳後は、右手をゆるめて、乳管頭を拡張させ、左手をつまみ変えてのち、また右手で排乳する。
つまり、左手で乳体部の乳を押し出し、乳管が、充満したところで右手で圧して外方へ噴出させる。
この運動を、交互に反復させる。

(3) 停滞乳送り出し方
左右の手指正面で、乳房をはさみ、つつむようにし、
圧迫、震顫、牽引、柔捏などを一緒にしてこねまわすように、四方八方からうつ乳を送り出す。
こうしておいて、また、二段式搾乳法を行う。

[3] 時間
左右、約30分内外を標準とする。
これは、乳房の状態、うつ乳の状態によって異なるが、その目安としては、
(1)、2分 (2)、2分 (3)、1分。
(2)、2分 (1)、1分 (3)、1分。
(2)、2分 (1)、1分 (3)、1分
(2)、2分 このようになる。
おわり。

なお、この手技上でのトラブルなどについては、当院は一切責任を負いません。
行う場合には、自己責任においてお願いいたします。

以上です。